この記事の結論
塗料・接着剤・化粧品原料・樹脂加工・工業薬品の小分けなど、化学製品を扱う中小企業の現場では、原材料の計量や混合、ボトルや容器への充填・包装、工場内の搬送、製品検査といった工程に人手がかかり、人手不足への対応が課題になっています。中小企業省力化投資補助金は、こうした工程を自動化する設備の導入費用を補助する制度で、化学工業
化学工業の省力化課題と中小企業省力化投資補助金の結論
塗料・接着剤・化粧品原料・樹脂加工・工業薬品の小分けなど、化学製品を扱う中小企業の現場では、原材料の計量や混合、ボトルや容器への充填・包装、工場内の搬送、製品検査といった工程に人手がかかり、人手不足への対応が課題になっています。中小企業省力化投資補助金は、こうした工程を自動化する設備の導入費用を補助する制度で、化学工業(日本標準産業分類上は製造業に区分される業種)の中小企業も対象になります。
結論から言うと、原材料の自動計量・混合・搬送装置やボトル充填・包装関連機器、搬送・自動倉庫機器など、カタログに掲載された汎用設備を選べる場合は審査なしで申請できるカタログ注文型(補助率1/2以下、補助上限は従業員規模に応じて500万〜1,000万円、大幅な賃上げを達成した場合は750万〜1,500万円)が最短ルートです。反応槽や専用の配合・充填ラインなど化学プラント固有の設備を含む大規模投資は、審査を伴う一般型(補助率は中小企業1/2〜2/3、小規模企業者等2/3、補助上限は従業員規模に応じて750万〜8,000万円、大幅な賃上げ達成時は最大1億円)を検討します。
この記事でわかること
- 化学工業でカタログ注文型を使える設備(原材料自動計量混合搬送装置、ボトル充填・包装関連機器、搬送・自動倉庫機器、検査・計測機器など)
- 2026年9月10日時点の補助率・補助上限額・公募スケジュール(公式ポータルの数値)
- 製品カテゴリの公式説明が「化学工業」「化粧品」「塗料」「樹脂成形業」を明記している対象工程
- 申請の流れとチェックリスト、カタログに製品がまだ登録されていないカテゴリを選ぶ場合の注意点
制度全体の仕組みをまず知りたい場合は中小企業省力化投資補助金2026年版の公式ガイドもあわせてご覧ください。金属加工業向けの活用例は鉄鋼・金属加工業の省力化補助金活用ガイドで解説しています。
化学工業の事業規模(日本化学工業協会の統計)
化学工業は製造業の中でも規模の大きい業種です。日本化学工業協会が経済構造実態調査をもとに公表している2023年データでは、化学工業(狭義)の全国の事業所数は5,641事業所、従業者数は39万8,040人、出荷額は33兆3,840億円にのぼります。プラスチック製品・ゴム製品を含む広義の化学工業では出荷額50兆8,830億円(製造業全体の13.6%)と、輸送用機械器具に次ぐ規模です。
本記事が対象とする塗料・接着剤・化粧品原料・樹脂加工・工業薬品の各分野は、いずれも事業所の大半が中小企業とみられる分野です。業種別の内訳は次のとおりです。
| 業種区分 | 事業所数 | 従業者数 | 出荷額 | 付加価値額 |
|---|---|---|---|---|
| 塗料 | 462 | 17,483人 | 1兆3,350億円 | 5,290億円 |
| ゼラチン・接着剤 | 150 | 6,660人 | 4,650億円 | 1,510億円 |
| 化粧品・歯磨・その他の化粧用調整品 | 689 | 48,178人 | 2兆1,350億円 | 1兆1,200億円 |
| プラスチック(有機化学工業製品の内数) | 280 | 38,725人 | 3兆9,570億円 | 9,840億円 |
| 無機化学工業製品 | 992 | 37,978人 | 3兆2,700億円 | 8,550億円 |
| 化学工業計(狭義) | 5,641 | 398,040人 | 33兆3,840億円 | 11兆9,710億円 |
出典:日本化学工業協会「化学工業の主要指標とその構成比(2023年)」(資料:経済構造実態調査 製造業事業所調査、全事業所・個人経営除く)。2026年9月10日確認。
中小企業省力化投資補助金の要点(カタログ注文型・一般型)
中小企業省力化投資補助金にはカタログ注文型と一般型の2つの類型があります。いずれも中小企業庁・中小機構が実施する制度で、対象は人手不足に悩む中小企業等です。まずは補助率・補助上限額・現行の公募スケジュールを整理します。どちらを選ぶべきかの詳しい比較はカタログ注文型と一般型の比較記事で解説しています。
カタログ注文型の補助率・補助上限額(2026年3月19日改定後)
カタログ注文型は、あらかじめカタログに登録された省力化製品を、共同申請する販売事業者と選ぶ制度です。2026年3月19日の制度改定で、従業員20人以下の補助上限額が引き上げられました。
| 従業員数 | 補助率 | 補助上限額(通常) | 補助上限額(大幅な賃上げ達成時) |
|---|---|---|---|
| 5人以下 | 1/2以下 | 500万円 | 750万円 |
| 6〜20人 | 1/2以下 | 750万円 | 1,000万円 |
| 21人以上 | 1/2以下 | 1,000万円 | 1,500万円 |
2026年3月19日以降の申請に適用される数値です。改定前(2026年3月16日17:00までに不備なく受理された申請のみ適用)は5人以下200万円(賃上げ時300万円)、6〜20人500万円(同750万円)、21人以上1,000万円(同1,500万円)でした。大幅な賃上げの目標は「事業場内最低賃金を3.0%(日本銀行の物価安定の目標2%+1.0%)以上増加」かつ「給与支給総額を6%以上増加」。労働生産性については、補助事業終了後3年間、年平均成長率3.0%以上の向上目標を定めた事業計画が必要です。出典:中小企業省力化投資補助事業公式ポータル「カタログ注文型とは」「2026年3月19日制度改定」(2026年9月10日確認)。
交付決定前の発注・購入は補助対象外
カタログ注文型・一般型に共通して、交付決定通知を受け取る前に発注・購入した製品は補助対象外です。中古品や、消費税などの公租公課も対象外経費に含まれます。見積書の取得はできますが、発注書・契約書の締結は必ず採択後に行ってください。
一般型の補助率・補助上限額
一般型は、化学プラント特有の反応槽や専用配合ラインなど、カタログにない個別現場向けのオーダーメイド設備・システムを対象に、事業計画の審査を経て採択されます。
| 従業員数 | 補助上限額(通常) | 補助上限額(大幅な賃上げ達成時) |
|---|---|---|
| 5人以下 | 750万円 | 1,000万円 |
| 6〜20人 | 1,500万円 | 2,000万円 |
| 21〜50人 | 3,000万円 | 4,000万円 |
| 51〜100人 | 5,000万円 | 6,500万円 |
| 101人以上 | 8,000万円 | 1億円 |
補助率は中小企業1/2(最低賃金引上げ特例の要件を満たす場合2/3)、小規模企業者・小規模事業者・再生事業者は2/3。大幅な賃上げの達成は補助率ではなく補助上限額の引き上げ(上表括弧内の額)につながります。基本要件として、労働生産性の年平均成長率+4.0%以上、1人当たり給与支給総額の年平均成長率+3.5%以上、事業所内最低賃金が都道府県最低賃金+30円以上の水準であることなどが必要です(従業員21名以上の場合は次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画の公表も要件)。対象経費は機械装置・システム構築費(必須)、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、外注費、知的財産権等関連経費。事業実施期間は交付決定日から18か月以内(採択発表日から20か月以内)。出典:中小企業省力化投資補助事業公式ポータル「一般型とは」(2026年9月10日確認)。
現行の公募スケジュール(2026年9月10日時点)
| 類型 | 状況 | スケジュール |
|---|---|---|
| カタログ注文型 | 交付申請随時受付中 | 先着順。改定後の申請受付期間は2027年3月末頃まで延長予定 |
| 一般型 第7回 | 採択発表待ち | 公募開始2026年6月5日/受付開始2026年7月1日/締切2026年7月31日17:00/採択発表2026年11月中旬(予定) |
| 一般型 第8回 | 公募中 | 公募開始2026年8月18日/受付開始2026年9月中旬(予定)/締切2026年10月中旬(予定)/採択発表2027年2月上旬(予定) |
出典:中小企業省力化投資補助事業公式ポータル トップページおよび「スケジュール(一般型)」(2026年9月10日確認)。一般型の公募回は年3〜4回のペースで実施されています。参考として一般型第6回は申請1,841件に対し採択1,176件でした(出典:同ポータル「採択結果」、2026年9月10日確認)。GビズIDプライムアカウントは取得に一定の期間を要するため、申請を検討する場合は早めの取得をおすすめします。
化学工業で対象になりやすい設備(自動計量・充填包装・搬送・検査・自動倉庫)
2026年9月3日版の製品カタログ(登録製品数は2026年8月28日時点)には195の製品カテゴリ・2,932件の製品が登録されています。「化学」を業種名に含む専用カテゴリはありませんが、原材料の計量・混合、容器への充填・包装、工場内搬送、検査・計測といった汎用工程を切り出したカテゴリの中には、公式の製品カテゴリ説明で化学工業・化粧品・塗料・樹脂成形業を名指ししているものがあります。以下は化学工業に関連の深いカテゴリの一覧です。
| 製品カテゴリ(公式名) | 対象業務プロセス | 価格目安(公式) | カタログ登録数 (2026年8月28日時点) | 公式の想定利用者・活用例 |
|---|---|---|---|---|
| 原材料自動計量混合搬送装置 | 加工・生産 | 200万円程度から | 22件 | プラスチック製品および色付き容器などの装飾品を生産する事業者。着色剤・添加剤の計量・攪拌・搬送を自動化 |
| ボトルマーク合わせ装置 | 加工・生産 | 300万円程度から | 0件(未登録) | 飲料・化粧品・調味料等のボトル製品を製造する中小事業者。充填・キャッピング・ラベリング・印字工程の向き合わせ |
| シュリンクフィルム収縮装置 | 加工・生産、梱包・加工 | 300万〜600万円 | 1件 | 食品・化粧品・日用品などを製造・梱包している中小の製造業者 |
| オートラベラー | 加工・生産、梱包・加工、保管・在庫管理 | 数百万円程度 | 26件 | 製造業、倉庫業、卸売業、小売業でラベル貼付作業を行う事業者 |
| 真空ろ過脱水装置 | 分別業務 | 600万円程度から | 0件(未登録) | 金属加工業・めっき加工業の加工排水・汚泥の脱水、自動車整備業の塗装ブース排水(塗料ミスト・スラッジの回収) |
| 無人搬送車(AGV・AMR) | 資材調達、加工・生産、検査、保管・在庫管理、入出庫 | 数百万〜1,000万円程度 | 43件 | 製造業の工場や倉庫業などで手押し台車等での搬送を行っていた事業者 |
| 自動倉庫 | 保管・在庫管理、入出庫 | 小型2,000万円程度から | 19件 | 製造業、倉庫業、卸売業、小売業などで入出庫・在庫管理を人力で行っていた事業者 |
| パレタイズロボット | 入出庫、加工・生産、梱包・加工 | 約400万〜3,000万円程度 | 45件 | 製造業、倉庫業、卸売業で出荷作業や物流業務等に携わる事業者 |
| 検品・仕分システム | 保管・在庫管理、入出庫 | 数百万〜1,000万円程度 | 6件 | 製造業の工場や倉庫業などで目視による検品・仕分業務を行っていた事業者 |
| RFIDによる一括読み取りシステム | 入出庫、保管・在庫管理 | ゲート型〜700万円/定置型〜800万円/ハンディ型〜650万円 | 8件 | 倉庫業、製造業、小売業など。製造業では資材のロット管理・部品トレーサビリティに活用 |
| CNC三次元測定機 | 検査 | 1,600万〜2,500万円程度から | 76件 | 「輸送用機器、化学工業、生産用機械器具、電気機械器具など」の製造業に携わる事業者(製品カテゴリの公式説明が化学工業を明記) |
| 自動画像測定機 | 検査 | 約600万〜3,000万円程度から | 25件 | 「電子部品製造業、自動車部品製造業、金属加工業、樹脂成形業など」精密な寸法測定が必要な製造業(樹脂成形業を明記) |
| 自動分析計測機器 | 計測・分析 | 200万〜1,000万円 | 4件 | 主に食品・製薬関連事業者など「データを正確に測る必要がある」事業者。品質管理・安全性確認・成分分析に活用 |
| パレットストレッチフィルム包装機 | 保管・在庫管理、梱包・加工、出荷 | 約150万円程度から | 0件(未登録) | パレット単位で製品・商品を出荷している製造業、卸売業、物流業の事業者 |
登録製品数が0件のカテゴリは今すぐ選べない場合がある
真空ろ過脱水装置、ボトルマーク合わせ装置、パレットストレッチフィルム包装機は、カテゴリ自体は承認されているものの、2026年8月28日時点でカタログに登録された具体的な製品がありません。カタログ注文型はカタログに掲載された製品を選んで申請する仕組みのため、登録製品が無い間は候補メーカー・販売事業者に登録状況を確認するか、一般型での申請を検討する必要があります。カテゴリと製品の登録の仕組みは製品カタログ登録の仕組みガイドで解説しています。
化学プラント本体の反応槽・蒸留塔・配合槽といった専用設備は、2026年9月10日時点のカタログには該当カテゴリが見当たりません。こうした化学工業固有の設備投資は、審査を伴う一般型での申請が基本になります。同じ製造業向けの活用例として鉄鋼・金属加工業の省力化補助金活用ガイドも参考になります。
原材料の自動計量・混合・搬送と充填・包装
製品カテゴリ「原材料自動計量混合搬送装置」の公式説明は、プラスチック製品製造工場で成形材料(ペレット)に着色材・添加剤を加える際、規定の配合比率にあわせて自動で計量・混合し、成形機まで自動搬送するシステムと定義されています。想定利用者は「プラスチック製品および色付き容器などの装飾品を生産する事業者」で、樹脂加工の現場で従来手作業だった計量・攪拌・搬送を自動化する例として明記されています。工業薬品や塗料原料の調合工程でも、原材料の計量・混合・搬送という業務プロセス自体は共通するため、対象になり得るか販売事業者に確認する価値があります。
容器への充填・包装では、「ボトルマーク合わせ装置」が飲料・化粧品・調味料等のボトル製品の充填・キャッピング・ラベリング・印字工程を想定利用シーンとして明記しています。「シュリンクフィルム収縮装置」も食品・化粧品・日用品を製造・梱包している中小の製造業者を想定利用者としており、化粧品原料メーカーの外装作業に活用できる可能性があります。自動計量機・包装機の対象カテゴリをさらに詳しく知りたい方は自動計量機・包装機の補助金活用ガイドで解説しています。
工場内搬送・自動倉庫
危険物や重量物を扱う化学工業の現場では、原料ドラム缶やペール缶、樹脂ペレットの搬送に人手がかかりがちです。「無人搬送車(AGV・AMR)」は台車の自動化機器として製造業の工場や倉庫で活用でき、「パレタイズロボット」は箱詰めされた製品や荷物をパレットに積み上げる作業を代替します。「自動倉庫」はパレット・ケース・コンテナの入出庫・保管を自動化し、ロケーション管理・在庫管理・日付管理の自動処理が可能です。原料や製品のロット管理・トレーサビリティが必要な化学製品では、「RFIDによる一括読み取りシステム」も製造業における資材のロット管理・部品トレーサビリティの活用例として公式に紹介されています。
検査・計測
検査・計測分野では、「CNC三次元測定機」の製品カテゴリ説明が主に利用が想定される中小企業として「輸送用機器、化学工業、生産用機械器具、電気機械器具などの製造業に携わる事業者」を明記しており、化学工業がカテゴリ説明に直接記載された数少ない例です。「自動画像測定機」も「電子部品製造業、自動車部品製造業、金属加工業、樹脂成形業など」を想定利用者に挙げており、樹脂加工を行う化学工業の関連企業も対象に含まれ得ます。「自動分析計測機器」は品質管理・安全性確認・成分分析・医薬品の有効成分量の定量計測に活用される機器で、公式の想定利用者は主に食品・製薬関連事業者とされています。AIを使った外観検査・検品の対象カテゴリは検品・検査AIの補助金活用ガイドで詳しく解説しています。
排水・廃棄物処理
塗料・接着剤の製造・使用工程では、塗装ブースの排水やスラッジの処理が課題になりやすい分野です。「真空ろ過脱水装置」の公式な活用事例には、自動車整備業の塗装ブース排水等で発生する汚泥・スラリーの処理として「これまで手作業で行っていた塗装ブースにおける塗料ミスト(スラッジ)の回収作業、搬送作業」を削減する例が明記されています。塗料の製造・小分けを行う化学工業の現場でも、同様の固液分離・脱水工程に応用できる可能性があります。ただし2026年9月10日時点で登録製品は0件のため、導入を検討する場合は候補メーカーへの確認が必要です。