省力化補助金の圧縮記帳とは?仕訳・会計処理・税務処理を税理士が解説【2026年版】
申請実務
公開: 2026年6月24日
更新: 2026年6月24日
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この記事の結論
省力化補助金(省力化投資補助金)は課税所得に加算されますが、圧縮記帳(法人税法第42条・所得税法第42条)を適用すれば受給年度の法人税・所得税を実質ゼロにできます。ただし圧縮記帳の対象は「固定資産取得に充てた補助金部分のみ」で、専門家経費・技術導入費は対象外。確定申告書に別表13の添付が必須です。本記事では仕訳・申告書記載・消費税・チェックリスト・FAQ10問を2026年版の公式情報で完全解説します。
省力化補助金の圧縮記帳とは?【2026年版・基本の定義】
中小企業省力化投資補助金(以下「省力化補助金」)を受け取った後、最も見落とされやすい落とし穴が税務処理です。「補助金は非課税」と思い込んでいる方が多いですが、省力化補助金を含む国の補助金は原則として法人税・所得税の課税対象(雑収入として益金・総収入に算入)です。
そこで活用できるのが圧縮記帳という制度です。
圧縮記帳とは
補助金で取得した固定資産の帳簿価額を補助金相当額だけ減額(圧縮)し、受給年度の課税所得を圧縮損と相殺することで、課税を将来年度へ繰り延べる制度です。法人は法人税法第42条、個人事業主は所得税法第42条が根拠規定です。免税ではなく「繰り延べ」である点に注意してください。
2026年現在、省力化補助金(カタログ注文型・一般型)のうち、固定資産(機械装置・器具備品等)の取得に充てた補助金部分については圧縮記帳の適用が認められています。一方、専門家経費や技術導入費など固定資産取得以外の補助金部分は適用対象外です(国税庁通達参照:間接交付された国又は地方公共団体の補助金で取得した固定資産の圧縮記帳の適用について|国税庁)。
省力化補助金に税金がかかる仕組みと圧縮記帳の効果【比較表】
補助金を受け取るとなぜ税金が発生するのか、圧縮記帳を使うとどのくらい変わるのか、具体的な数値で確認しましょう。
| ケース |
補助金額 |
機器取得価額(税抜) |
受給年度の課税所得増加 |
法人税負担増(実効税率30%の場合) |
| 圧縮記帳なし |
500万円 |
1,000万円 |
500万円 |
約150万円 |
| 圧縮記帳あり |
500万円 |
1,000万円 |
0円(圧縮損と相殺) |
0円(繰り延べ) |
圧縮記帳を適用しない場合、補助金500万円に対して約150万円が受給年度の追加税負担となります。補助金を受け取った年に資金が出ていくため、設備投資の実効性が損なわれます。圧縮記帳を使えばこの負担を将来に分散できます。
圧縮記帳は「免税」ではなく「繰り延べ」
圧縮記帳後は固定資産の帳簿価額が下がるため、毎年の減価償却費が少なくなります。その分、将来の節税効果も小さくなります。トータルの税負担額は圧縮記帳の有無にかかわらず最終的には同額です。受給年度の資金繰りを守るための制度として理解してください。
省力化補助金で圧縮記帳できる経費・できない経費【一覧】
省力化補助金には複数の補助対象経費がありますが、圧縮記帳の適用対象は固定資産取得に充てた部分のみです。経費区分ごとに整理します。
| 補助対象経費の区分 |
代表例 |
圧縮記帳の適用 |
根拠 |
| 機械装置・器具備品費 |
ロボット・自動化装置・清掃ロボット等の本体 |
対象 |
法人税法第42条・所得税法第42条 |
| 付帯設備費 |
電気工事・設置工事等(固定資産として計上する場合) |
対象(固定資産計上分のみ) |
同上 |
| 専門家経費 |
外部コンサルタント費・導入支援費 |
対象外 |
固定資産取得以外の支出 |
| 技術導入費 |
特許権・ライセンス使用料(無形固定資産の場合を除く) |
要確認(個別判断) |
無形固定資産として計上する場合は適用可能性あり |
| クラウドサービス利用費 |
SaaS月額費用・クラウド設定費 |
対象外 |
固定資産取得に該当しない |
補助金に複数の経費区分が含まれる場合、固定資産に充てた金額と充てない金額を按分して圧縮記帳を適用します。按分計算は複雑になるため、顧問税理士に確認することを強く推奨します。
参考:国税庁「間接交付された国又は地方公共団体の補助金で取得した固定資産の圧縮記帳の適用について」 / 国税庁「第2節 国庫補助金等で取得した資産の圧縮記帳」
圧縮記帳の適用要件【2026年確認事項】
圧縮記帳を適用するには以下の要件をすべて満たす必要があります。
法人・個人事業主共通の適用要件
- 国庫補助金等の交付を受けた事業年度(年)に返還不要が確定していること
採択後に「交付決定通知書」または「確定通知書」を受け取った時点で返還不要が確定します
- 同事業年度(年)に、交付目的に適合した固定資産を取得または改良していること
補助対象設備(機械装置等)の取得が確定通知と同じ事業年度内に完了していることが必要です
- 固定資産の帳簿価額を圧縮限度額の範囲内で損金経理等により減額していること
直接減額方式または積立金方式のいずれかで処理します
- 確定申告書に「圧縮額の損金算入に関する明細書(別表13)」を添付していること
法人の場合は別表13(1)を申告書に添付する必要があります。記載漏れがあると圧縮記帳の適用が認められません
事業年度またぎに注意
補助金の確定通知と機器の取得が異なる事業年度にまたがる場合、圧縮記帳の処理が複雑になります。特に12月決算・3月決算の法人は、補助金確定と機器納品のスケジュールを税理士と事前に確認してください。翌年度に取得する場合は「特別勘定」(法人税法第43条)の活用も検討されます。
個人事業主(所得税法第42条)の適用
個人事業主も、法人の圧縮記帳に相当する制度が所得税法第42条に規定されています(「国庫補助金等の総収入金額不算入」)。適用の流れは以下の通りです。
- 補助金を受け取った年の確定申告書Bに「国庫補助金等の総収入金額不算入に関する明細書」を添付
- 付表への記載も必要(申告書類は所轄税務署で確認)
- 固定資産の取得価額から補助金相当額を控除した金額を基礎に減価償却を計算
個人事業主の場合も処理が複雑なため、税理士への相談を強く推奨します。
省力化補助金の圧縮記帳 仕訳例【直接減額方式・積立金方式】
圧縮記帳には「直接減額方式」と「積立金方式」の2つの処理方法があります。中小企業では仕訳がシンプルな直接減額方式が多く採用されています。
直接減額方式の仕訳例(機器取得1,000万円・補助金500万円)
ステップ1:機器購入時
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 機械装置 | 10,000,000円 | 普通預金 | 11,000,000円 |
| 仮払消費税 | 1,000,000円 | | |
ステップ2:補助金入金時
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 普通預金 | 5,000,000円 | 雑収入 | 5,000,000円 |
ステップ3:圧縮記帳の適用(直接減額方式)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 固定資産圧縮損 | 5,000,000円 | 機械装置 | 5,000,000円 |
この結果、「雑収入500万円」と「固定資産圧縮損500万円」が相殺され、当期の課税所得への影響がゼロになります。機械装置の帳簿価額は500万円(1,000万円 - 500万円)となり、以後はこの金額を基礎に減価償却を計算します。
積立金方式の概要(法人のみ選択可)
積立金方式では、固定資産の帳簿価額を直接減額せず、決算時に「圧縮積立金」を積み立てることで税務上の損金算入を行います。
補助金入金時(同上):普通預金 5,000,000円 / 雑収入 5,000,000円
決算時:繰越利益剰余金 5,000,000円 / 圧縮積立金 5,000,000円
積立金方式では会計上の利益が増加しますが、税務上は圧縮積立金が損金算入されるため課税は繰り延べられます。固定資産の帳簿価額は変わらないため、財務諸表上の資産が大きく見える点が直接減額方式との違いです。
- 直接減額方式:簡便・中小企業向き。固定資産の帳簿価額を直接下げる
- 積立金方式:財務上の資産価値を保ちたい場合に有効。申告調整が必要
申告書への記載方法【別表13・法人税申告書・個人確定申告書】
圧縮記帳を適用するには確定申告書への所定の記載が必須です。記載漏れは圧縮記帳の不適用に直結します。
| 事業者区分 |
申告書の種類 |
必要な添付書類 |
| 法人(直接減額方式) |
法人税申告書(別表四・別表五・別表十六) |
別表13(一)「国庫補助金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入に関する明細書」 |
| 法人(積立金方式) |
法人税申告書(別表四・別表五・別表十六) |
別表13(一)(積立金方式選択の場合も同様) |
| 個人事業主 |
確定申告書B |
「国庫補助金等の総収入金額不算入に関する明細書」(付表) |
別表13の添付忘れは取り返しが困難
仕訳上で圧縮記帳の処理をしていても、別表13を確定申告書に添付しなければ税務上の損金算入が認められません。申告後に別表13の添付漏れが発覚した場合、修正申告または更正の請求が必要になります。申告期限前に顧問税理士と添付書類を必ず確認してください。
省力化補助金と消費税の取り扱い【課税事業者・免税事業者別】
省力化補助金と消費税の関係は以下の通りです。
消費税の基本的な取り扱い
| 論点 |
取り扱い |
| 補助率の計算基準 |
税抜金額が基準。消費税分は補助対象外 |
| 補助金の受取は消費税の課税対象か |
不課税取引。補助金の受取自体に消費税は発生しない |
| 課税事業者の仕入税額控除 |
機器購入に係る消費税は通常通り仕入税額控除の対象。実質負担ゼロ |
| 免税事業者の消費税 |
仕入税額控除ができないため消費税分(10%)が全額追加負担 |
消費税負担の具体例
機器取得(税抜600万円・消費税60万円)で補助金300万円(補助率1/2)を受け取るケース:
- 課税事業者(インボイス登録済):補助金300万円を受け取り、消費税60万円は仕入税額控除で実質負担ゼロ。自己負担は取得費600万円 - 補助金300万円 = 300万円
- 免税事業者(インボイス未登録):補助金300万円を受け取るが、消費税60万円は仕入税額控除不可。自己負担は300万円 + 60万円 = 360万円
インボイス制度への登録検討も含め、免税事業者の方は税理士に相談することを推奨します。
圧縮記帳後の減価償却計算と税額控除との関係
圧縮記帳を適用すると、固定資産の帳簿価額(取得価額)が下がります。この圧縮後の帳簿価額を基礎として減価償却を計算します。
減価償却の計算例
| 項目 |
圧縮記帳なし |
圧縮記帳あり |
| 機器取得価額(税抜) |
1,000万円 |
1,000万円 |
| 補助金相当額 |
500万円(雑収入) |
500万円(圧縮損と相殺) |
| 圧縮後帳簿価額(取得価額) |
1,000万円 |
500万円 |
| 耐用年数(例:5年・定額法) |
年200万円の減価償却費 |
年100万円の減価償却費 |
| 5年間の節税効果の差 |
減価償却費合計1,000万円 |
減価償却費合計500万円(差額500万円は受給年に繰り延べ分が充当) |
圧縮記帳後は年間の減価償却費が小さくなります。長期的なトータル税負担は同額ですが、受給年度の税負担を将来に分散できます。
中小企業経営強化税制(即時償却・税額控除)との関係
省力化補助金と同じ設備で「中小企業経営強化税制」(即時償却または取得価額の10%税額控除)が利用できる場合があります。ただし以下の点に注意が必要です。
- 圧縮記帳と即時償却の併用は可能ですが、圧縮後の帳簿価額が即時償却の基礎になります
- 圧縮記帳と税額控除も理論上は併用可能ですが、圧縮後の取得価額が控除の計算基礎になります
- 適用要件(経営力向上計画の認定・工業会証明書等)が別途必要です
- 具体的な適用可否は公認会計士・税理士に個別確認してください
省力化補助金 圧縮記帳 申告書作成 チェックリスト
圧縮記帳を適用するにあたり、確認が必要な事項をチェックリストとしてまとめました。
| カテゴリ |
確認事項 |
確認 |
| 補助金の確定 |
交付決定通知書または確定通知書を受領済みか |
□ |
| 補助金の返還不要が事業年度末までに確定しているか |
□ |
| 補助金額の内訳で「固定資産取得に充てた金額」と「それ以外」を区分しているか |
□ |
| 固定資産の取得 |
機器(固定資産)が補助金確定と同一事業年度内に取得・検収完了しているか |
□ |
| 固定資産台帳に機器が正しく登録されているか(取得価額・耐用年数) |
□ |
| 機器の請求書・検収書・支払領収書が保管されているか |
□ |
| 仕訳・会計処理 |
補助金入金時に「雑収入」として計上しているか |
□ |
| 直接減額方式または積立金方式のいずれかを選択し、仕訳を完了しているか |
□ |
| 圧縮後の帳簿価額で減価償却計算を更新しているか |
□ |
| 申告書の記載 |
法人:別表13(一)を作成し、確定申告書に添付する準備ができているか |
□ |
| 個人:「国庫補助金等の総収入金額不算入に関する明細書」を作成しているか |
□ |
| 税理士確認 |
顧問税理士に圧縮記帳の適用可否・申告書の記載内容を最終確認してもらったか |
□ |
他の補助金との圧縮記帳適用比較【ものづくり・IT導入・事業再構築】
省力化補助金の圧縮記帳を他の主要補助金と比較します。
| 補助金名 |
圧縮記帳の適用 |
対象となる経費 |
注意点 |
| 中小企業省力化投資補助金 |
可(固定資産取得分のみ) |
機械装置・器具備品費(固定資産計上分) |
専門家経費・クラウド費用は対象外 |
| ものづくり補助金 |
可(固定資産取得分のみ) |
機械装置費・建物附属設備費 |
技術導入費・専門家経費は対象外 |
| IT導入補助金 |
原則不可 |
ソフトウェア(クラウドサービス含む)が主 |
ソフトウェアは固定資産として計上する場合のみ要確認 |
| 新事業進出補助金(旧事業再構築補助金後継) |
可(固定資産取得分のみ) |
建物費・機械装置費 |
建物費は自己所有建物の改修が対象 |
| 小規模事業者持続化補助金 |
条件付きで可 |
固定資産として計上される機器・設備 |
広告費・消耗品費は対象外 |
いずれの補助金も「固定資産取得に充てた部分のみ」が圧縮記帳の対象という原則は共通です。補助対象経費の区分が複数ある場合は按分計算が必要になります。
圧縮記帳を使わない方が有利なケース
圧縮記帳は任意の制度です。必ずしも適用が有利とは限りません。以下のケースでは適用しない判断もあります。
- 受給年度が赤字または大幅な欠損金がある法人:補助金を益金算入しても欠損金と相殺でき、税負担が発生しない場合は圧縮記帳の効果が薄い。むしろ将来の減価償却費を大きく保つ方が有利になる可能性がある
- 中小企業経営強化税制の税額控除を最大活用したい場合:圧縮後の取得価額が控除基礎となるため、税額控除率が高い設備では圧縮記帳による節税効果と税額控除の兼ね合いを慎重に判断する必要がある
- 補助金額が小さく税負担が軽微な場合:圧縮記帳の申告処理コスト(税理士費用)が節税額を上回る可能性がある
適用の有無は、直近の利益状況・欠損金・税額控除の活用状況を総合的に判断する必要があります。必ず顧問税理士に相談してください。
まとめ:省力化補助金の圧縮記帳で損をしないために
省力化補助金(省力化投資補助金)の圧縮記帳についてポイントをまとめます。
- 補助金は課税対象:受給年度に雑収入として課税。何もしなければ補助額の約30%が税負担
- 圧縮記帳で課税を繰り延べ:受給年度の税負担をゼロにできる(免税でなく繰り延べ)。根拠は法人税法第42条・所得税法第42条
- 対象は固定資産取得分のみ:専門家経費・クラウド費用等は圧縮記帳不可
- 別表13の添付が必須:仕訳だけでは不十分。確定申告書への添付なしでは税務上の損金算入不可
- 消費税は補助対象外:補助率1/2・2/3の計算基礎は税抜金額。免税事業者は消費税分が全額追加負担
- 圧縮記帳が不要なケースも:赤字年度・欠損金が多い場合は適用しない判断もある
- 税理士への相談を強く推奨:会計処理の誤りは修正申告・追徴課税のリスクにつながる
補助金受取後の税務処理は、省力化投資補助金の税務処理ガイドと本記事を合わせてご覧ください。申請に不安がある方は無料相談窓口もご活用ください。